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日本人って、自分の感情をストレートに表現するのが苦手なのかなあ。そうじゃなく、感情を抑える天才なのだろうか。日本人と言っても若者から老人まであるので、戦中世代、戦後世代の日本人、と言うべきかも知れない。
梅田兜太さんは65才、地元でも古ーい自転車屋さん。春先には中学や高校の新入生
が梅田自転車店で、通学用の自転車を買っていく。兜太さん、肺がんになって2年がす
ぎた。在宅療養を続けた。5年前に喉頭がんの手術を受けているので、しゃべるのは発
声補助具を使用する。
「先生、まだ大丈夫でしょ?あと2、3年は大丈夫でしょ?」
落ち込む気配が見受けられない。肺のレントゲン写真やCTを見ると、よくぞここま
で元気にしておられるなあーと感心する。それだけじゃない。「おととい、小豆島、家
の者の車で、行って参りました」と笑ったりもする。
地元の漁港から上がる旬の魚たち、たとえば、トビウオ、ヌカエビ、シロイカ、ハタハタ、モサエビ、ドギ、アジ、キス、マツバガニを楽しむ。
ほぼ寝たきりとなった時も、「きのう、鳥取一中の59期生の同窓会、行きました。同級生、結構、死んどりました」と笑った。衰弱はゆっくり進行。「遺言、早めの決着、お願いします」と変な主治医の進言にも、「ほぼ決着、なり」と笑った。
食べられなくなり、ぼくの診療所に入院となったが、るいそう注) 著しいのに、ギョロと眼光鋭く、そしてニィハハ、と弱く笑うことはできた。
「先生、どうですか?あすは、生きとれますか?」
こんなQ&Aは初めて、と思いながらぼくは答える。「あすは大丈夫、ぜったい大丈夫」兜太さん、「ワハハ」と笑った。
悲しいとか辛いとか寂しいとか、兜太さんは表さない。奥さんも次女も他界されてる。
だからなのか、そうでないのか。「鳥取一中、59期生はやっぱり違う」と声をかけると、聞こえない声で「ワハハ」とまた笑った。
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| 注) るいそう:衰えやせること。(岩波国語辞典 第五版より引用) |
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